パナソニックHDの触覚AI「T-Rex」、両手の器用作業で成功率65%
パナソニックホールディングスは11月5日、指先の触覚にほぼ即座に反応して両手作業を調整するロボット操作AI「T-Rex」を共同開発したと発表した。同社グローバル・ニュースルームと日本経済新聞が伝えた。パナソニック米国研究開発会社(PRDCA)のほか、米カリフォルニア大学バークレー校、NVIDIA、スタンフォード大学、ローマ・サピエンツァ大学、ItalAIの研究者と協力し、接触の多い実世界の12作業で平均成功率65%を達成。従来の最高性能を30ポイント上回ったという。
T-Rexは、約5Hzで更新する視覚・言語・行動(VLA)プランナーと、約20Hzで動く触覚補正ループを一つのモデルに統合している。従来のモデルはカメラ映像に頼りやすく、触覚を静的な入力として扱いがちで、カードが滑ったり柔らかい物が変形したりすると失敗しやすい。研究チームは日常物200種類超と基本動作22種を組み合わせ、両手操作のデータ7700件超(約100時間)を収集。頭部・手首カメラ映像、10本の指先の力と変形、自然言語指示を同期記録した。
この触覚付きデータで中間学習し、作業ごとに約100回の実演で微調整した結果、ページめくり、卵の移し替え、歯磨き粉の塗布、鍵の開錠、カードの抜き取り、電球のねじ込みといった作業に対応した。触覚入力を外すと平均成功率は42%に落ち、高速な触覚ループが人手に頼る製造・物流現場でどれだけ効くかを示した。
実務への影響
成果は、物理世界で動く機械のルールを議論する国内の流れとも重なる。AIエージェントとフィジカルAIを対象にした総務省の事業者ガイドライン見直しや、工場向けフィジカルAIで連携する日立とファナックといった動きだ。パナソニックは、部品の挿入・取り外し・ねじ締めや、倉庫での壊れやすい荷扱いへの応用を目指し、人手不足の緩和につなげたいとしている。判断そのものをロボットに委ねるわけではない。
T-Rexの論文は、11月9日から12日まで米オースティンで開かれるロボット学習国際会議(CoRL)で発表される予定だ。今後の焦点は、パナソニックグループの製造ロボットへの実装と、実験用の道具を離れた現場で65%の成功率がどこまで保たれるかである。